沈丁花を辿る

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「ああいう仕事してると土日は避けて一定期間を置きながらになるから休みは月金、月木、火金のどれかになるんだよね。最近は定休日なんてのもなかなかないし。おれはデパート勤務なんだけど基本は火金が休みなんだ。小萩くんは月金?」 「……はい」 「だよね、実は前からそうなんじゃないかなあ、って思ってたんだ。作業が見られるのは金曜日ばっかりだったしね。ちなみに今日は何を作るの? また、新しいもの?」  相変わらず、芳瑞は一人興奮してぺらぺらとしゃべり続ける。 「……今日は塗装を」  康宏が答えると芳瑞はぱんっと勢いよく、手を打った。 「そっか、この前のマガジンラック、まだ何も塗ってなかったもんね。わあ、それも楽しそうだなあ。見させてもらっていい?」  にこにこ、にこにことどこまでも芳瑞は屈託ない。シューズラックなんだけど、という反論はひとまず呑み込んだものの康宏はうつむき、頭を抱えた。気付かなかった頃ならいざ知らず、見られていると分かっている状態で、しかも、上から見下ろされている恰好で作業をするというのは想像しただけでもどうにも落ち着かず、むずがゆい。 (できればやめてもらいたいんだけど……)  息をつき、心の中でつぶやいたが昨夜、ほんの少しだが芳瑞の人となりに触れた後とあっては邪険にするのも気が引ける。
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