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「ああっ、ごめんね、急に話しかけちゃったりして……」
康宏の困惑に気付いたのか男ははっと表情を改めるとあわてて詫びる。だが、特に悪びれた風もなく、それどころか目を細めて頭を掻くと「実は」と続ける。
「君が作業してるとこ、前からときどき見させてもらってたんだ」
そう言われて康宏はさらにぎょっとなった。
「去年の秋ぐらいだったかなあ、隣から変わった音がするなあ、と思って覗いてみたら君がちょうどそこで作業してるところだったんだ。あのときは確か、ほっそりとして背の高い棚を作ってたときだったかな。それがさ、どんどん組み上がって形になっていくのを見てると楽しくなってきてそれから何度かちらっちらっと」
「……」
「君はもしかすると販売とかそういった仕事をしてるのかな? あ、いや、別に答える必要は全然ないんだけど、おれもそうだから今日みたいな平日に休みが一緒になることが何回かあってさ、それで。さすがに冬は作業もしてなかったみたいだったけど十日ほど前から再開してただろ? しかも、また、何か新しいものを作り始めたみたいだからずっとわくわくしてたんだ。それが完成したところが見られたものだからうれしくて、つい……」
男は一人、身振り手振りを交え、早口に話すとそのたび、おおらかに笑う。康宏は呆気にとられ、返事をすることも、いや、口を差し挟む余裕もなく、立ち尽くした。
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