沈丁花を辿る

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 巧の懊悩は康宏の将来を案じるがゆえのものだろう、それは言われずとも分かっていた。だからといって納得できるものではない。頭で理解するのと心が受け入れるのとは全く別だ。表面上、変わらぬ振りを続けながら康宏は足元から崩れ落ちていくような不安定さに怯えた。いつ出て行けと言われるだろう、いつ別れが切り出されるだろう、いついついつと不安ばかりが押し寄せた。そして、一年前、康宏は巧のマンションを出た。終わりを告げられることが怖くて逃げ出した。しかし、遠くまでは離れられなかった。職場も変わっていない。追いかけてきてほしかった。連れ戻してほしかった。だが、巧からは連絡すらない。 (こんな風に思い出すのはおればっかりなのかな……)  じわりと涙がにじみ、よろめく。康宏はガードレールに寄りかかり、震える体を宥めた。
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