沈丁花を辿る

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 〇 〇 〇  あいにく次の休みは雨でシューズラックのペインティングはできないまま無為に流れていった。仕方なく、次に作るものを考えながら時間を埋めていく。  郊外のショッピングセンターに併設された職場のおもちゃ屋には賑やかな日々が到来していた。春休みに入り、子供たちは朝から毎日のようにおもちゃ屋に押し寄せ、ゲームの試遊機やカードゲーム機に群がっていた。入園入学の需要を見越し、ステーショナリーやランチグッズなどを集めたコーナーでは連れ立って訪れた若い母親たちがあれでもない、これでもないと品定めをしている横でおじいちゃん、おばあちゃんが孫へのお祝いにと一揃いまとめて買っていく。お会計に、プレゼント包装に、はたまた、カードゲーム機が詰まるたび子供たちに呼ばれて康宏は店内を走り回った。  アルバイトを経て契約社員から正社員となって一年半、現在、康宏は店長に次ぐリーダー的立場にある。店長が休みの日には店長に代わってショッピングセンターから貸与された店内用PHSを持ち歩き、店長代理として売場に立たねばならない。もちろん康宏の手に負えないような事態が発生すればショッピングセンターの関係各所へ相談しに行き、助けを求めることになるがさすがにそこまでのことはそうそうなく、だからといって平穏無事に何事もなく終わる日も少ない。
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