三十五万八千飛んで三番目のアリスの夢

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 イルミネーションたっぷりのパレードでは兎頭の執事さんが何故か真ん中に立っていて。 「…ねぇ、兎さん」 「なんだい!?アリス!」 「…どうして兎さんは行く先々でトラブルを起こすの?」 「そっちの方が面白いからだよ!」 「そ、そう…」  …そして、最後の観覧車。  私と兎頭の執事さん、二人きりで、乗って。 「アリスは楽しかった?」 「うん。とっても楽しかったよ」  本当に、楽しかった。  今までこんなに楽しい日があったかなって思うぐらい、楽しかった。  今まで。  …今まで? 「さぁアリス!今夜はどこで寝よう!?」 「…ねぇ、兎さん」 「ホテルはありきたりだね!  近くのお店?メリーゴーランドの上?  あ!この観覧車の中でも良いよ!」 「…兎さん」 「さぁアリス!どこで寝よう!?」 「兎さんッ!」  私は、大きな声を出す。  …今まで出した事の無いぐらい、大きな声だった。 「…アリス、どうかしたの?」  兎頭の執事さんは首を傾げる。  …その声は…なんだろう、少しだけ、どこか嬉しそうだ。 「…私は、おうちに帰りたい」 「どうして?」 「どうしてって…」 「君はもう、向こうの世界に未練は無いんでしょう?」 「ッそんな事無い!  私は…私は…!」  なんとなく、思い出した。  思い出して、しまった。 「そっか。     
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