三十五万八千飛んで三番目のアリスの夢

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 お仕事でなかなか帰らない、お父さんとお母さん。  友達もいない、独りぼっちの小学校。  毎日毎日が、その繰り返し。  小学校の、帰り道。  居眠り運転の車。  キキー。  ドッカーン。  ガッシャーン。  轟音。  轟音。  痛い。  轟音。  痛い。  ピーポーピーポー。  血。  赤。  痛い。  痛い。  痛い。  …女の子は、思いました。  薄れ征く意識の中。  ちょっとだけ。  …もう、良いかな。  どうせ、生きていたって。  …虚しいの、繰り返しだもの。  …だから、私は、 「…さぁ、もう寝よう?  眠ってしまえば、もう苦しいだけの記憶は無くなる。  また明日、そのまた明日、そのまた明日も、  ずっと、ずっと、楽しい思い夢だけがそこにあるんだよ?」  兎頭の執事さんは、悲しそうに微笑みます。  女の子は、目を閉じました。  楽しい明日を、夢見て。  …そう。これは夢。  私が望んだ、楽しい毎日の夢。  その夢が、今、確かに叶ったのです。  夢。  ゆめ。  ユメ。  yume。 「………………ねぇ、兎さん」 「どうかしたのかい?アリス」 「…私には、夢があったの」 「……どんな夢?」 「…私は…私は、お菓子屋さんになりたかったの。     
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