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前にね、お母さんとお父さんと、一度だけ行った、お菓子屋さん。
…美味しかった。
味だけじゃなくて、心がぽかぽかしたの。
…とっても、美味しかったの」
「…そっか」
「…ねぇ、兎さん」
「ん?なんだい?」
「……私は、本当は……生きて、いたかったの。
本当は、本当は……生きて……いたかったの……!」
女の子は、囁く様に、呟く様に…泣く様に、そう告げました。
女の子は、思い出したのです。
虚しいの繰り返しの中、確かにあった、幸せ。
お仕事でなかなか帰らない、お父さんとお母さん。
…そんな中でも、お母さんは毎日ご飯を作ってくれて。
お父さんは帰って来た日には、必ず女の子を褒めてくれて。
…その温かい思いは、虚しいに押し潰されてしまって。
独りぼっちの、小学校。
そんな中でも、感じていた視線。
隣の男の子は、女の子と話したくてうずうずしていて。
他の子達も、多くこそなくても、女の子とお話したがっていて。
…その細やかでも確かにある希望は、虚しいにかき消されてしまって。
最期の時。
死の瞬間。
命が消える、その瞬間。
泣きながら。
死に恐怖しながら。
「……死にたく…………ない…………!」
女の子は、そう、呟いて。
…女の子は、思い出したのです。
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