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それから、流れるように合唱コンクール当日となった。勇太のクラス3-1は、本番前に一度だけ歌おうと言っていたが、勇太はいつものごとくサボった。
そして本番、3-1は一番最後。いわゆるオオトリってやつだ。本番中、勇太の口は全く動かなかった。足がガクガク震え、顔がこわばる。観客の視線が勇太に突き刺さる。皆勇太だけを見ている気がする。・・・怖い・・・。課題曲中も、自由曲中も、勇太は動くことができなかった。
3-1は、銅賞を取った。金賞は3-2、銀賞は、2-1。3年生として、2年生に負けたことは屈辱的なことだった。審査員は、2-1からは、クラスの強いまとまりを感じた。けれど、3-1には2-1ほどのまとまりを感じることができなかったと言った。その時、クラスの人たちの視線を感じた。
その後の帰りの会の時、担任の先生も、もっとクラスがまとまっていれば・・・と言い、最後の合唱コンクールが終わった。帰ろう・・・と思っていた時。ふと、井上を見た。泣いている・・・井上は、クラス委員長として、クラスをまとめようと頑張っていた。勇太にも、練習をしようと、声をかけていた。けど、銅賞。泣くのは当ぜ・・・
勇太は周りを見回した。勇太以外のクラスの人たちが泣いている。きれいな涙を流して・・・その瞬間、勇太の心にある感情が芽生えた。顔をかすかに赤らめ、勇太は早足で学校を出た。
帰り道・・・秋の冷たい風が勇太の乾いた頬を撫でた・・・ (完)
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