焦る気持ち、突きつけられる現実

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焦る気持ち、突きつけられる現実

 天性のアイドル、とはやし立てられてアイドルになった。別にアイドルは嫌いじゃない。注目されることが昔から好きだった。  だから、早くデビューしたい。もっと注目を浴びたい!  そう思ってるのに、メンバーが足を引っ張る。せっかくもらった新曲も、あの子がいるから失敗に終わる。 『次失敗したら……わかるよね?』  この間のライブ後のミーティングで言われた言葉。私には重く深く突き刺さったのに、他のメンバーは違うの? 何とも思わないの? 焦ってるのは私だけなの!?  ムカつくことが多くて、タバコの本数が増えた。イメージが悪いってのはわかるけど、仕方がない。 (早くデビューしなくちゃ……早く早く早く早く!)  私の焦りに他のメンバーは気付かない。私が一人で努力してることも知らない。天才? そんな訳ない。香那が失敗したところは何十回も練習した。何百、何千と。あの子は何回やってダメなの? (少なくとも私よりはやっててくれないと話にならないわ)  まだ火のついているタバコを灰皿に押し付けて、スマホのロックを解除する。お気に入り登録をしている歌恋の動画を再生。  バーチャルだけど、アイドルとして脚光や歓声を浴びる彼女。対して私は、誰にも注目されず、もう後がない。  私もバーチャルに生まれたかった。そうすれば私だって――。 『じゃあ、交換してみる?』
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