今日から私が【歌恋】

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今日から私が【歌恋】

「え――……」  歌恋が指を鳴らした、ように訊こえた。演奏が終わったタイミングだったかもしれない。  周りの音が消えて、何も訊こえない。目の前が真っ白になり、コーヒーカップに乗せられて勢いよく回された気分……。 「みんなー、ありがとーっ!」  ハッ、と我に返った瞬間、目の前にスポットライトが当てられた。 「歌恋最高!」 「か・れ・ん!」  私の目の前には、大勢の観客。たくさんのペンライト。大きなステージが広がっている。  私、歌恋になったの!? 「さぁ、みんな! 次の歌、いくよーっ!」  私の意志とは関係なく動く身体、歌う口。何百と聴いた音楽に合わせて踊る。  観客のボルテージが上がり、ペンライトの数が増える。人も閲覧数も増えていく。 (私を見てくれる人がこんなにもいる! こんなにもファンがいてくれる!)  こんな形で夢が叶うなんて、こんな夢の叶え方があっただなんて――。
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