第一章 水郷公園

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 ペダルから足を離しても、坂を下る自転車はスピードをグングン増していく。  眩しい夏の日差しを受け、道路に陽炎が立っている。顔に当たる風が心地よい。  ヒャッホーと叫び声を上げながらコジはぼくの二十メートル程先を走っている。  コジの奴、なんで競走しようなんて言い出したんだろう。  コジの自転車が下り坂のお終いを通りすぎた。続く登り坂を暫く惰性で走ったあとで、 コジはチラリとぼくの方を向いてから、体重をかけてペダルを漕ぎだした。  五秒程遅れて、ぼくも坂の底を通過。後ろを振り返るとマサミとサヤがゆっくりと坂を 下りてくる。あの二人は最初から競走する気なんか全然ないんだ。 「おーい。谷田部(やたべ)。早く来いよ」  コジが上り坂の途中から叫んでいる。  この坂を登りきったところが、アイツの決めたゴール地点なのだ。  でも、そこがぼくたちの目的地というわけではない。  そもそも、ぼくたち四人が何処を目指しているのかというと、隣の町に一か月ほど前に オープンしたばかりの水郷公園だ。  そこは水道の浄水場に併設された公園で、浄水場の仕組みを解説した展示施設が建って いる。そこを見学して夏休みの自由研究にしようというわけだ。
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