(1)「マンゲツさんとわたしのおはなし。」

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「あ、もう無くなっちゃう…」 結構大きな瓶に入っていたたっぷりのホイップハニーが、 マンゲツさんの大きな体の中に収納されてしまいました。 「食べ過ぎですよ、マンゲツさん。」 「…作り置きしとこうかな。」 作り置きした分、その日に消費されている気がするのは私の気のせいでしょうか。 マンゲツさんは瓶の淵についたそれをすくってちょっと舐めると、 「よし、作っておこう。」と立ち上がって、動き出しました。 ホイップハニーは、ハチミツとセカイジュモドキの樹液で作られます。 使用するハチミツの分量は、その日集めたハチミツの四割。 残りの六割は、ミツバチさんたちへの報酬として支払われる契約になっています。 それをまずはゆっくりと練って、練って、空気を混ぜ込みます。 次に用意するのが、セカイジュモドキの樹液です。 これはこのお店の大樹から採れるのですが、匂いはメープルシロップに少し似ています。 でも、色は白くて一見、練乳のような感じのとろりとした液体です。 マンゲツさんはそれをさっきのハチミツにあわせて、少し混ぜ合わせると、 銀製の特製の鍋の中で、大樹を削って作った杓文字でゆっくり一時間ほど炊きます。
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