16人が本棚に入れています
本棚に追加
マンゲツさんは、その名前の通りの熊さんです。
この世界でよく見るような獣人さんではありません。
ごく普通のツキノワグマで、でも胸の模様が満月のようにまんまるなので、
「満月模様のマンゲツさん」だと、みんなそう呼んでいます。
マンゲツさんは人の言葉を理解し、人の様に話します。
人間のように会話して、人間の様に行動し、島の人たちと仲良く生活しています。
しかも彼は、なんとこの島でカフェまで経営しちゃってるんです。
それは、街はずれの小さな森の中にあります。
大きなセカイジュモドキの樹を、そのままお店にした、古本カフェです。
そしてわたしは、彼のお店で働いています。
実はわたしたちは、「ちょっといい関係」なんです。
「やあ、おはよう。」
わたしが朝お店に入ると、マンゲツさんはもう準備を始めています。
銀縁のちょっとお洒落な眼鏡を愛用し、店のロゴの入った赤いエプロンを身に着け、
獰猛な肉食動物のはずなツキノワグマの姿が、なんともいい感じになってます。
その格好で店に立つ彼を、人々は「クマさん可愛い!」とか「癒し系なクマさん♪」
などとほめたり噂したりします。
でもたぶん、マンゲツさん自身は自分を熊だとは思っていないかもしれません。
きっと自分の事を「熊のような人間の一種」だと思ってる気がします。
そういう事をわたしたちは特に話したりしないので、よく分かりませんが。
最初のコメントを投稿しよう!