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一体どういう仕組みでそうなっているのかは、
実はマンゲツさんもよく知らないそうです。
ただ彼が言うには、この店そのものが樹と一緒に生きているものらしく、
本棚そのものに意思のようなものがあるのではないかという事です。
だから棚がそれを認めない本については、たとえ誰かがそれを残そうとしても、
本棚はそれを吐き出してしまい、決して自分の中に収納させようとはしないそうで、
今のところ、私が書く絵本も何度か試したけど、本棚は置いてはくれません。
この間なんて、こっそり数冊、弊店終了間際に本棚に置いてみたんですが、
本棚はその翌日、マンゲツさんの頭の上にそれを全て吐き出したらしいです。
でも、いつかはかその本棚に、自分の作品を置いてもらいたいです。
「きっとね、本棚はグルメなんだね。」
マンゲツさんは少し悪戯な笑顔を見せて、私にそう言います。
「それって、私を励ましてるんですか?からかってるんですか?」
「そのままだよ、本棚は正直なんだ。」
「どうせ私の本は、美味しくないですよ。」
私を励ますために言ってくれてるのは解るんだけど、とっとむかつきます。
私がむっと口を尖らせると、マンゲツさんは今度は少し慌てて、
棚から取り出したホイップハニーの瓶を、私の前に置きます。
「まあまあ、むくれないで。」
「いいですよ、もう背中かゆくても、掻いてあげませんから。」
「あああああ、ごめん~。」
マンゲツさんはちょっと不器用なところがあって、
背中がかゆいと手が届かなくて困るんです。
最初はお店の樹の柱に、背中をこすりつけていたんですが、
それだとお店が揺れて、けっこうみんながびっくりするのです。
なので、私が掻いてあげるんですが、その時の幸せそうな彼の顔と言ったら…
「意地悪言いました!ごめんなさい!」
大切なホイップハニーの瓶から、ごっそりと中身をすくって、
わたしにそのスプーンを差し出すマンゲツさん。
「怒ってませんよ。」
わたしはそれを一口でくわえ、カフェラテをさらに一口。
蜂蜜のいい香りと、珈琲の香りが混じり合って、とても美味しいです。
「美味しい。」
わたしが笑顔をみせると、ほっとした表情になるマンゲツさん。
本当に、この人は表情豊かな熊さんです。
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