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― なぜそのようなことを?
うちの会社にBというやつがおるんですが、こいつが良くできるやつでしてね。私が逆上がりしても勝てそうにないんですよ。しかも、かなりの努力家でね。私はいつも、羨望や嫉妬が混じった眼で眩しくそいつのことを眺めとったんですよ。
ある時、何かきっかけがあったわけではないんですが、やつと私も平等なのかなっていう考えが頭をよぎりまして、ほら、良く人間は平等だっていうじゃないですか。まあ、正直、皆、欺瞞ってことは知っているんですけどね。
で、急に検証してみたくなったんですよ。人間が完璧に平等なんてあり得るのかを。あえて、馬鹿になってその欺瞞を鵜呑みにしてみようと思ったわけです。それで、あんなことになったわけです。
― なぜ、Bさんを殺害することが、人間が平等であることの証明になるんですか?
ええ、私が導き出した答えが、対等な死だったんですね。いくら、Bができるやつでも、暗い夜道で、後ろから襲えば、なんてことなかったんですよ。私、一人で、うまくいきました。そして、殺しました。
案の定、こうなってしまってはBに優位は無くなったわけです。ただの、物質になったわけですから。ただ、これでは、平等ではないんですよ。何せ、私が生きていますから。
ということで、これから私は死なにゃならんのです。私が死ねばB=私という関係が成立するのです。
― いきなり話が、飛躍してしまいましたね。平等の証明の方法として、他の方法は考えなかったのですか?例えば、努力で差は埋めることができるとよく言われるじゃないですか。
私が、証明したかったのは完璧な平等なんですよ。努力で差を埋めるのは、確かに間違ってはいませんし、もしかしたら追い抜く可能性も秘めています。しかし、相手がBのような、才能のあるやつで、尚且つ、努力家、なんて奴が相手だと、この方法以外に、平等になる方法はないと思うんですよ。努力っていうのは人生に運が介入する幅を小さくする行為だといえると思うんです。
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