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くくくくっ、と笑いが漏れた。
ああ、おかしい。全てはあの方の思惑の中なのかも知れない……。
そう思うと、それも悪くはない。だが、少女の存在がひどく不安定に映る。
これは、激動の始まりに過ぎない。そう男は理解した。
それを、その先を、見ることができないのは非常に残念だ。もしくは、男にとってその方が良いのかも知れない。
反発することもあったが、常に一族を思い、彼を思い、尽くしてきた。それを理解してもらえなかったことが悔やまれる。
だが、最後に冥土の土産として楽しいものを見せてもらった。
身体が燃えるように熱い。もうすぐ、魂とともに身体もこの世から消えるのだろう。
冷酷な瞳と、驚きを隠せない少女の瞳。どちらも自分へとまっすぐ向けられている。
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