615人が本棚に入れています
本棚に追加
「ま、喜んでくれて私も嬉しい。謹んで食べなさい」
「はい。女王様、味わっていただきます」
多香子の言葉遊びに、美柚も同じように返しながら、二人を見ると顔の前に手を合わせた。
「ごめん。今年はやろうと思えばできたのに、さっきまでバレンタインデーだということを忘れてて。また週明けにでも」
そう。さっきはそれを思い出したのだ。
うっかりというか、もういろいろあり過ぎてそこまで考えることができなかった。
現状と今までの習慣から、多香子も特に期待していなかったようで、返ってきた言葉も淡々としていた。
「そんなことだと思った。ああ、あと、これ狭山さんから預かってきたよ」
「ありがとう。その狭山さんは?」
きょろきょろと視線を走らすが、目当ての人物は見えない。
最初のコメントを投稿しよう!