Valentine’s Day

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「ま、喜んでくれて私も嬉しい。(つつし)んで食べなさい」 「はい。女王様、味わっていただきます」  多香子の言葉遊びに、美柚も同じように返しながら、二人を見ると顔の前に手を合わせた。 「ごめん。今年はやろうと思えばできたのに、さっきまでバレンタインデーだということを忘れてて。また週明けにでも」  そう。さっきはそれを思い出したのだ。  うっかりというか、もういろいろあり過ぎてそこまで考えることができなかった。  現状と今までの習慣から、多香子も特に期待していなかったようで、返ってきた言葉も淡々としていた。 「そんなことだと思った。ああ、あと、これ狭山(さやま)さんから預かってきたよ」 「ありがとう。その狭山さんは?」  きょろきょろと視線を走らすが、目当ての人物は見えない。
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