1-1 現状をどうしろと

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   ** * **  外は木枯らしが吹き、時おり、(うな)るようにビュゥーと音を立てる。その音とともに風が通り抜け、廊下も寒々と冷気を漂わせていた。  その廊下の隅っこで、吉永美柚(よしながみゆ)は状況にいたたまれず視線をそっと下の方に反らして、ただただそこに立っていた。  規格外の美形男子三人に囲まれ、逆ハーレムでうはうはどころか、美柚の顔色は若干青い。  引きつりそうな顔をなんとか堪えてはいるが、悪い予感に気が気でなく身を縮こめていた。  高校一年の二学期が始まったすぐの頃。父親が失踪して、住み込み家政婦の仕事を探して辿り着いた場所は、美柚が苦手で怖いと思っていた、学校で有名美形双子、紅夜薗兄弟、レンとジンの屋敷であった。  そして、彼らの正体を知り、捕われ、見張られ、(さら)われ、これは呪いかと思うほどすったもんだの末、紅夜薗兄弟のところに親公認で正式に居候することになった。
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