2 それは脅しというんです。

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「あんまりこういうのは好きじゃないんだが」 「……ぇ?」  背中に激突した時、ヤのつくお仕事をされている方なのかと思うほど強面だと思った。低い声、鋭い眼差し、後ろになでつけた黒髪、モデルのようにすらりとした肢体で着こなすハイブランドのスーツ。それはものの見事にマッチしていて、絵になりすぎて、怖いくらいの迫力だったけど。 「…………」 「ヒィィ!」  無言の笑顔のほうが震えるくらい怖いだなんて。 「心配するな。結婚っていう体をとるのは重役の前でだけだ。会社中に知れ渡るわけじゃない。レーベルが軌道に乗りさえすれば解消する、ただの肩書き。だから手伝ってくれるか?」 「……ででで、でも」 「あと、そうだな。こういったら頷いてくれるか? スーツのことは気にしなくていいぞ? ちなみにこのスーツの値段なんだが」  ニコッと笑顔が言い放った恐ろしい金額に目の前が真っ白になりかけた。
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