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怪しいスーパーマーケット
閑静な住宅街の近くにスーパーがオープンした。近辺にはスーパーがない為さぞ繁栄するだろうと思ったら、車一つ止まっていない。閉店しているかと思えば、季節の品売り出し中と幕が鯉のぼりのように風に舞っていた。
小腹が空いていたのでからあげ棒でも買おうと中へ入ってみたら、なぜか売り場が荒らされていた。
「ひっ!!!」
強盗がいるのかと思い、声にもならない悲鳴が店内に響き渡った。歩き回ってみると、キャベツはズタズタにされ、飲料水は所々窃盗されたのか、歯抜けの売り場がいくつか見受けられた。
音を立てないように忍び足で惣菜売り場へ向かう。
からあげ棒は諦めきれない。
蛍光灯の一部が割れ店内にガラスが散らばっており、水槽から脱走した魚が水死体となって横たわっていた。
それでもからあげ棒は諦め切れない。
ようやく惣菜売り場へと近づいたらと思ったら、入り口付近からシャッターが勢いよく閉まる音がした。
閉じ込められたと思いつつも、からあげ棒へ手を伸ばす。
その瞬間不意に後方から肩を叩かれ、カンガルーが跳び上がるようにびっくりした。
「もしもシリーズ第一弾、荒廃したスーパー楽しめましたか?」
大黒様のようなふくよかな顔をした中年の男性が立っていた。
「驚かしてすいません。ここの店長をしている水(ミス)と言います。普通の地方スーパーとは違う変わったスーパーを提供したくて、子供の発想なんですがもしも○○だったらという企画を立てて店内販売してるんですよ」
「はぁ」
説明を求めていたわけではないし、反応に困った。店長はもう少し何かコメントが欲しいという顔をしていたが、やがてうんうんと分かったというように頷いて、
「君の想い分かりました。ここで一緒に働きましょう」
と先程よりも強く肩を叩いた。
「最初の従業員として君は今日から副店長だ」
「どういう事ですか?」
説明を求めるも店長は早速次回のもしもシリーズの構想を練り、「闇鍋」ならぬ「闇売場」の発案に意欲を示している。
私は戸惑いを感じながらも、就職難で無職だった窮地を助けてくれた店長に感謝をし、返事一つで作業に取り掛かる事にした。
そのスーパーがどうなったか今知る者は誰もいない。
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