3.【憎悪】の剣先

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「それが、命の首輪(ライフ・カウ)の力か。本当に命を増幅する効果があるんだな」 「この野郎・・・!レール×アイアン」  トコリコは足を地面に叩き付けると、それを支えに振り返りながら左腕の腕輪を前の世界で習得したレールガンに変化させ、至近距離から珀に掃射する。音速を超える弾だ。至近距離で撃たれたのならば、避けようがない。ところが、珀は振り返り様に撃ち出された、レールガンの弾を何事もなく交わし始めた。 「な!」  それどころか、距離を置き撃ち出される弾を全て、透明な剣一本で切り落としてしまう。数百発は撃ち出された弾を避けたのを除いて全てだ。  見切れるはずのない弾を斬り落としておきながら、珀の息は上がっておらず平然としていた。 「それが、お前がグラスから与えられた力か」 「いや。これも、僕が生まれながらして持っていた力。この力があったから、歌倶夜神父は僕を育てくれた。それより、早く僕のことを殺した方がいいよ。そうしないと、この世界がひどいことになるよ」 「酷いこと?」 「気付いていない。君達は、〈スロク〉である僕に対して警戒と同時に少しずつだけど、【憎悪】を懐きつつあんだ。僕の象徴である【憎悪】を」 「!」  珀に指摘され、息が上がっていたトコリコは気付いた。彼が言うように、自分が【憎悪】を懐きつつあるということに。パラードも同じだ。恨みがある訳でもないのに、珀という存在をあり続けることに、【憎悪】という感情が強まりつつあった。 「よく世間では【憎しみ】からは何も生まれないとか言われているが、それは違うね。【憎悪】からは【憎悪】が生み出される。そして、生み出された【憎悪】からは更なる【憎悪】が生まれ、やがて、それは世界に蔓延して滅ぼす。僕は存在しているだけで、世界に【憎悪】を与えることができる。些細な【負】の感情が【憎悪】により増幅され、その全ての矛先は向くべきところに向く」  ネロが注視し、キャロンが倒した不審な女。彼女も、またこの世界に現れた【憎悪】がもたらした結果であった。そして、キャロンもいつもにまして好戦的になっていたのも。 「だから言ったでしょう。遠慮しなくていいから。全員、全力でかかってきな。その方が〈スロク〉とは、なんなのかよく分かるから」
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