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「【憎悪】に目覚めた僕は、世界の本当を知った。世界が、どれだけ【憎悪】に包まれているのか。その【憎悪】を悪と決めつける元凶はのうのうと世界に居座り続けている・・・。だから、決めたのさ。世界を滅ぼしてやろうと・・・。
虎子、分かるか?僕の目は物事を遅く捉えることができる。だから、どんなに絶望的な光景でも永遠の時であるかのように目に映ってしまうんだ。実際の時間にすれば数分の出来事でも、僕には何十時間、いや何日も時間をかけてゆっくりと泣き叫ぶ子供をバラバラにしているように見えた。その間、何も出来ずに苦渋を味わい、【絶望】を見せつけられ続けた」
拍がどのような光景を見てきたのか、当事者でない虎子には分からない。分からない、想像できないからこそ、恐ろしい。珀の心を変えてしまうほどの【絶望】と【憎悪】が。
「おら!」
珀が殴られた。空気を読まずに乱入してきたトコリコに。
「やっと当たった!どうやら、見えない攻撃には反応が遅いらしいな」
「ぐ!人が話をしている最中に・・・!」
トコリコに殴り飛ばされたネロは【憎悪】に満ちた表情で彼を睨み付けると、地面を蹴って駆け出し反撃に撃って出ようとする。
トコリコが指摘したように、珀は刹那の一瞬を見ることはできる。だが、それは、見えていなけば役に立たない。死角からの攻撃にはどうしても、反応が遅れてしまいがちになる。
「前の世界で、気付いたことを試してみるか」
トコリコは右手を握り締めると後ろに肘をひいた。ネロは剣を構えトコリコを今度こそ、斬ろうとする。
(どうせ、ボディーか顔を狙ってくるんだろう。遅く見えていれば、交わすことなど)
だが、トコリコは珀の考えとは裏腹に拳を真正面から突き出す真似はしなかった。立ち止まり右腕を更に大きく後ろにひくと、弧を描くように虎子によって傷を負わされた珀の左腕に拳を叩き込んだ。
「が・・・!」
珀は悶絶の表情を浮かべる。さっきも、そうだったが、今までの〈スロク〉にはない反応だ。どんなにダメージを受けても、〈スロク〉のメンバーに致命傷を与えるには至らなかった。だが、今は確実に珀は左腕が殴られたことにより激痛を感じている。
それにそうしてなのか、『共有世界』を使おうとしない。
〈スロク〉のサイロスといい、単なる偶然ではない。
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