3.【憎悪】の剣先

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「どうやら、その逆さまの十字架を傷付けられると問題が起こるらしいな」  やっと見つけた〈スロク〉の弱点。トコリコは好機に笑みを浮かべると負傷している左腕に続け様に拳を突き立てる。何度も左、二の腕に付けられた逆さ十字架を殴られ続け、珀は横にのぞけって不自然な態勢になりながら横倒しになった。 「ぐ・・・」  シャベルの鋤によるものか、殴られ続けたせいか、左腕は機能せず、ずっとブラブラと彼の傍を漂い続けている。珀は剣を口で銜えると右手で地面を押して、崩れた態勢を立て直そうとした。トコリコの追撃も寸前のところで交わし、口で銜えて剣で反撃する。  口で銜えているとはいえ、動きが遅く感じている珀にとっては当てられないことはなかった。それに、トコリコには剣筋を見抜くことはできない。勘で避けるしかない。刃先が自分の喉元にある命の首輪に触れ、喉を切り裂かれる前に、後ろに飛びトコリコは回避する。 「トコリコ!」 「待て!」  トコリコに加勢しようとナイフを手にしたネロをトコリコは止めた。自分が珀の相手をする為ではない。 「どういうつもりだ?」  トコリコは自分の両腕の変化した腕輪を本来の状態に戻すと起き上がり、剣を納める珀を睨み付けた。戦っている真っ最中だというのに、珀は剣を何故かしまうという、おかしな行動に出た。あまりにも、不可解な行動だ。次元を移動して異世界に逃げる素振りも見せなかった。 「【憎悪】を持って、行動している割には随分と楽しそうじゃないか」 「分かるか?」  珀は自分の考えを見抜く、トコリコに邪悪な笑みを浮かべ返した。 「さっきから、おかしな行動ばかりをして・・・。本当に〈スロク〉なのか?」 「僕は【虚飾】のナイフとは違うからね。【憎しみ】を持っていようと、嘘はつかない。僕は正真正銘の〈スロク〉さ。現にホラ・・・」  珀は自分の左腕を右手で持ち上げて、ボロボロになったその腕に刻まれた逆さ十字架の傷跡を見せた。虎子とトコリコの攻撃により、十字架の形が崩れてしまっている。自分達が傷付けたとはいえ、生々しく痛々しかった。
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