3.【憎悪】の剣先

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 すると、それを察してなのか珀は、 「気にすることはないよ。左腕(こっち)は〈スロク〉になる前から使えなくした。子供を助けられなかった、自分をもっとも【憎み】、自らの手で傷付けた痕だから」  左腕をブラブラさせていたのは、今の戦いで使えなくなったからではなかった。ずっと前から使えない腕だった。 「なんにせよ、この逆さまの十字架が傷付いた途端、弱体化したのは、僕が今でも〈スロク〉である証さ。〈スロク〉のマークは、グラスの力を与えられた証。トコリコが持っている左の腕輪と同じような仕組み」  珀はトコリコの銃の腕輪を指差して言う。霧の国で、トコリコの銃の腕輪が異世界と繋がっていると、そこの住民は言っていた。『LINK』による繋がりが、トコリコに力を与えているのだと。  グラスもそれと似たような力を持っているらしい。もっとも、彼の場合はトコリコとは逆で自らの力を懐柔した者達に配分しているようだ。 「だから、傷をつけられると伝達がうまくいかなくなるんだ。復元力も弱くなるし、なによりグラスから与えられた力は、マークが直るまで使えなくなってしまう」 「何故、それをオレ様達に教える」  トコリコは改めて珀を睨んだ。逆さまの十字架が〈スロク〉の特徴であると同時に弱点を明かすなど、デメリットしか感じられないことを言う珀。 「別に弱体化するだけで、〈スロク〉のマークを壊されたからって消滅する訳ではない。他の人から聞かなかった。僕達は、与えられた象徴、そのものなんだ。復元されるのが極端に遅くなるというだけで、消滅はしない」  珀はあっけらかんという。弱点を簡単に明かしたのは、そう言うことかとトコリコは納得しかけた。弱体化はしても、消滅はしない。そうなると、ますます、〈スロク〉とは厄介な存在をグラスが生みだとしたと悔しく思う。 「まてまて。そんなに苦々しい顔をしないで。君達を殺そうとしたのは、本気さ。ただ、それは試したまでのこと」 「試しただと?」 「最初に言ったでしょう、僕の象徴は【憎悪】。今だって、強い【憎悪】を懐き続けている。僕はどうしても、【憎く】て殺したい奴がるんだ」
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