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「殺したい奴だと?オレ様達か?」
「違う。むしろ、君達には都合がいいことかもしれない」
珀は自らの象徴である【憎悪】に従って動いている。今も昔も。そして、その【憎悪】の感情は日を追うごとに強くなる。
「僕はね」
珀は左腕をダランと垂らすと、それを揺らしながら舞台でも歩くかのように進み、ベンチに腰を降ろした。
「〈スロク〉が【憎く】て仕方ないのさ」
それは、意外な言葉であった。
最初、トコリコ達は珀の言っている意味が分からず、目が点になり思わず、聞き返してしまった。
「〈スロク〉が憎いだと?」
珀は頷く。
「ああ。〈スロク〉の奴らが、【憎く】て、【憎く】て、【憎く】て、【憎く】て、【憎く】て、【憎い】!奴らを生かしておく訳にはいかない!」
【憎悪】の象徴に相応しい珀の周囲からはどす黒い感情が滲み出ているのを、トコリコは感じていた。触れてしまえば、自分もその強すぎる【憎悪】に囚われてしまのではないかと警戒してしまい思わず、全ての金環の力を解放して虹の王(ゼロ・グランド)の姿となった。この姿なら、【負】に分類されるエネルギーを退けることはできるから。
「だから、僕はトコリコ達に出会えるのを待っていた。僕は〈スロク〉だけど、それと同時に〈スロク〉に【憎悪】を懐いている。矛盾しているかもしれないけど、そもそも、存在なんて矛盾だらけさ。僕はただ、自身の【憎悪】に従って動いている。トコリコ達が、〈スロク〉やグラスと渡り合えるか。それを、試すと同時に、トコリコを殺すというというグラスが与えた命令を果たそうとした。
トコリコ、お前はグラスと強い因縁がある。グラスを倒す為には、〈スロク〉と戦うことになることは分かっているな。そして、僕は〈スロク〉を【憎ん】でいる。お互いの利害が一致している・・・」
珀は席を立つと右手を差し出してトコリコに聞く。
「僕と君達は敵対関係ある。だが、お互いの目的を達成する為に手を結ばないか?」
「・・・・」
トコリコは差し出された珀の手を黙って見た。グラスを倒す前に、配下の〈スロク〉をどうにかしなくてはいけない。それに対し、〈スロク〉の珀は共同戦線を張らないかと提案してきた。
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