3.【憎悪】の剣先

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 トコリコは黙って右手を差し出した。差し出して、そのまま、珀の懐に拳を叩き込んだ。 「トコリコ!」  トコリコの行動にネロは思わず、声を上げた。向こうからの申し出。〈スロク〉を倒すには欠かすことない強力な助っ人だというのに、彼はそれを断ってしまった。  懐を殴られた珀は飛ばされ、そのまま、観客席に身体を強打し項垂れた。 「ぐ・・・!」 「お前、誰にものを言っているか分かっているのか?」  トコリコは右手の力を増幅しつつ珀に言う。 「奴との決着はオレ様がつける。奴の配下にいる者と手を結べと本気で思っているのか?」 「く・・く・・・」  トコリコは珀と協力する気はなかった。どこまで、本当のことか分からない以前の問題だった。トコリコにとって、最大の敵はグラスであり、その配下にいる〈スロク〉など眼目になかった。彼らからは、グラスについての情報を聞き出すだけで十分であった。もし、邪魔をしてきた時は倒すまでのこと。 「く・・・く・・・ははははは・・・。あーはっはっは!」  なにがおかしいのか、トコリコに殴り飛ばされた珀は腹を抱えて声をあげ笑った。 「なにがおかしい」 「いや、悪い。悪い。やはり、僕の思った通りの人だ。トコリコは。何者にも流されることない。絶対的な意思をもった存在だと」  珀はトコリコがそう言う、行動に出ると分かっていた。分かっていたからこそ、刹那の一瞬が見えるにも関わらず、真正面からの拳を避けることなく受け付けた。  トコリコの『答え』を。 「断られるのは思っていたさ。いくら、僕が〈スロク〉を【憎ん】でいるからって、協力するはずはないと」 「だったら。何故」 「協力をしてくれとはいわない。僕は僕のやり方で、〈スロク〉を殺すまで。僕には〈スロク〉を消滅させられる力がある」 「なんだと?」  あれだけ〈スロク〉を倒すことに必死だったトコリコ達。ところが、珀はそれを簡単に殺せるという。
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