三章・呪いの期限

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明美は結婚してからその話を夫から何度も聞かされて覚えてしまった。狭い家に書斎を作り、子供がいないのも夫がその過去に縛られているせいだと思っている。 普段は陽気で快活な性格なのだが、書斎に入りその毒殺事件の調査に没頭している時の夫は異常に映った。 「主人は時々妄想に駆られて、誰かを疑ったりするんです。最近では会社の営業部長の吉田さんて方を犯人かも知れないと言ってました」 明美は書斎のデスクの方を見ながら語りかけるように呟いた。さっきまでそこにあった夫の死体と緑色の汚物を思い浮かべているのだ。 「なぜ、僕に教えるんですか?メッセージのことと言い、さっぱり分かりません」 「それは主人が昨夜、伊藤さんのことを心配してたからです。恐ろしい呪いの話をして後悔してたんです」 「確かに飲んでる時に都市伝説を教えてやると言って、その過去の毒殺事件の事を話してましたが。ただの酒の席の話しでしょ」 僕は顔を引きつらせながら無理やり笑った。 「毒のドリンクは二本あった。それも数時間後にその毒に呪われる」 頭の中で先輩の亡霊が僕に語りかけていた。 実はタクシーの中で奥さんが送ったその写メを見せられ、脳裏にこびりついていたのだ。 なぜ、それが僕へのメッセージなんだ。
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