三章・呪いの期限

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明美は表情を変えないまま伊藤俊哉をじーっと真顔で見つめた。夫・田仲実はあの自販機の呪いにかかっていたんだ。 だから死を回避しようとしてお酒を飲んでいるうちにその秘密にすべき話を会社の後輩の伊藤俊哉に話してしまった。 「呪いは誰かに話すと、話した本人は助かると聞いたことありませんか?」 僕はそう言われてこの夫婦の異常性に恐怖を感じた。主人が死んだばかりなのに、その悲しみよりも呪いの自販機の事に意識がいっている。 「見ましたよね。呪いの自動販売機。まさか、俊哉さん飲みました?」 明美は真顔から徐々に微笑みを含んだ表情になっている。 僕は気持ち悪くなって吐き気をもよおしてきた。 確かに真夜中の通りに現れた自販機で飲み物を買った。しかし、飲んだのは最初の一本の少しだけ。 後から出てきた二本目は飲んでもないし見てもない。 「私も夫に聞かされて見たことがあります。もちろん、買わないで逃げましたよ」
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