三章・呪いの期限

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「嘘だ。そんな呪いなんて信じるもんか」 僕はまた吐きそうになったが、奥さんを突き飛ばすようにしてトイレを出た。 「先輩も奥さんも狂ってるとしか思えない。もう付き合ってられません。帰ります」 僕は逃げるように玄関へ向かった。 その背後で奥さんの笑い声が聴こえた。 それは泣き喚いているようにも思えたが、恐ろしくて振り返ることもできなかった。 デジャブだ。昨夜の自販機から逃げ出したあの恐怖感と同じだった。 毒殺犯の呪いがそこに存在すると思った。 そして僕は靴も履かずに手で持って外へ出た。 そのまま通りを走りながら、ただの都市伝説だと呪文のように自分に言い聞かせた。 その時ブツブツと呟きながら靴を持って走っている僕を見た人は、僕こそ狂ったように目に映ったかも知れない。
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