四章・呪いの結末

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そして僕は定時前に仕事を切り上げて帰らせてもらった。具合が悪かったのもあるが、もうひとつどうしても早く確認したかった事があったのである。 通勤している田園都市線に乗り、長津田駅で降りて昨夜歩いた道のりを辿った。 そして、あの真夜中の通りに輝いていた真新しい自動販売機がそこに存在するか調べた。 酔ってはいたが、間違いなくその付近にあるはずの自販機はどれも昨夜見た物とは違っていた。 呪いの自販機は消えている。 僕は呆然としながらその辺を何度も彷徨い歩いた。 そして携帯電話が胸ポケットで鳴り響いたので驚いて出ると、それは警察からだった。 「もしもし、はい伊藤俊哉ですが」 「実は田仲実さんの自殺に疑わしい点がありまして、内密に連絡させていただきました」 「はい。なんとなく分かります」 僕は警察も呪いの自販機の捜査に乗り出したのかと勘違いした。 「呪いの自販機の件ですよね?」 「はっ?呪い?」 「いえ、すいません。冗談です」 そしてその警察官が言った事は僕がまるで想定してなかった内容だったのである。 「田仲実さんの奥さんが多額の保険金を御主人にかけていた事が分かりました。それに検視で自殺とは思えない不審な点が見つかりまして。それで伊藤さんが何か知らないかと改めてお聞きしたいのですが」
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