二章・毒のドリンク

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僕はいたたまれなくなって、営業部へ行って吉田部長にその事を話そうとした。このままでは先輩は退職金も出ないだろう。 最悪の場合、過去の連続毒殺事件の汚名も着せられるかも知れない。しかし、なんて言えば分かってくれる? 「すいません。ちょっと営業部へ行って来ます」 僕は担当上司にそう報告して席を立ったが、電話中だった制作課長に引き止められて更に衝撃的な事を告げられた。 「伊藤くん。ちょうど営業部長から電話だ」 「えっ?」 「田仲さんが亡くなったそうだぞ」 「はっ?う、嘘でしょ?」 「とにかく、代われ。お前に頼みたい事があると吉田部長がおっしゃっている」 「わかりました」 そして僕が電話に出ると部長は事務的な感じでこう告げた。 「昨日、当社を退職した田仲くんが自殺したとの連絡があった。悪いが、君様子を見に行ってくれないか?会社としてはもう関わりたくないんだ」
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