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「師匠、師匠はルーペースを知ってるんですか!?」
ルーペースと言えば、僕でもわかる有名な魔法鍛冶師なのだ。
「ああ、俺はよーく知ってるよ。向こうは俺のことは知らないだろうけどな」
僕は、がっくりと肩を落とした。
そんなことだろうと思った。
「これがハッタリと押し出しだよ。痛快だろう?」
「恥ずかしいですよ、ただのホラじゃないですか」
「世知辛い世の中なんだから愉しく生きなきゃな。あと一軒行くぞ」
僕は何も答えずに師匠の言うままに歩いた。
「『らくらく屋』ですか?」
「おう。ここは俺の昔馴染みがやってる店だからな。自分の家のように寛いでいいぞ」
師匠の声は馬鹿でかい。
しかも自分勝手なこの言い分。
店の主は黙っていられなかったのだろう、古びた扉をガタガタと開けて出てきた。
「全く。そんなことできるの君だけですよ。その子はお弟子さんですか?困ってるじゃないですか」
上品そうな細身の男性だ。
らくらく屋などと、軽い店の名前をつける感覚は良くわからないが、常識人のように見える。
僕は、ホッとしていた。
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