僕が辿りついたのはお気に入りのこの店

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大きな店を先に見てしまったせいか、こちらははっきり言ってみすぼらしい。 けれどもずっと落ち着いていられる。 「ロクイー、こいつにお前の店のオススメ見せといて貰えるか?あと、白金の塊は手元にあるか?」 「十字路堂だとすぐに手に入るでしょうに。三日ほどかかりますよ。オススメならいくらでもありますけどね」 「十字路堂は行ってきたとこだがな。良い顔はされなかったよ。時間はかかっても構わない。お前んとこで買うよ。俺はちょっと野暮用あってさ。こいつをその間預かってくれ。ウォラーレってんだ」 「相変わらず勝手な人ですねぇ。ウォラーレ君、君、この人についてたんじゃ大変だったでしょう?」 僕は泣きそうになった。 気持ちをわかってくれる人がいるのが、こんなに心強いとは思わなかった。 「今日はもう遅いですからね。狭いですが、奥の空き部屋を使って下さい。旅の疲れもあるでしょうからゆっくり休むんですよ」 師匠からは全く聞いたことのない優しい言葉ばかりで、僕はロクイーさんちの子になりたいと心から思った。
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