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ロクイーさんは初めの印象通り、とても親切な人だった。
「わかりますか?魔法鍛冶師の仕事は、剣だけではない。日用品もありますね」
ロクイーさんの店には鍋や釜、鋏や茶道具、人形まで揃っていた。
「あっ、これお針子マラキアの縫い針だ!こっちは祭屋リームスの泥んこ人形の一揃い!」
「……良くわかりましたね。君、目利きですね。マラキアやリームスは表にはなかなか出てこないんですが」
「師匠は露店や屋台が大好きで……僕にも気の済むまで見させてくれたんです」
「そうですか。これが心配なんですが、あの人、君に読み書きをちゃんと教えてくれましたか?」
「いいえ全然。自分はモグリだからって」
「まあ確かにそうなんだけど」
ロクイーさんは肩を震わせて笑いを堪えている。
「いえね、彼はちゃんと大学に行ったんですよ、歴史に残るビリでしたし、卒業はしてませんけどね」
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