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「今日からお前の名前は『ペロ』な」
僕は愕然とした。
僕が生まれたナーラド国は、魔剣士と魔法鍛冶師を多く輩出していることで知られている。
特に、魔剣士と魔法鍛冶師を兼任していたアートルムの英雄譚は、飽きるほど聞かされて育った。
劇的な一生を送ったこともあって、アートルムは没後も人気がある。
そんなわけで、ナーラド国には沢山の魔剣士や魔法鍛冶師を育てる私塾がある。
そこに入るのは憧れだけれども、僕の家は貧しい農家。
経済的に無理だった。
七人きょうだいの四番目は影が薄い。
十三歳になったその日も、家族から忘れられていた僕の夕飯はなかった。
「僕はこんな家出て行くから!」
癇癪を起こして叫んでみた。
「行ってらっしゃい」
誰もが冗談だと思っていたのだろう。
僕は、後に退けなくなって家を出た。
そして、行き倒れているところを、旅の途中だった怪しい師匠に拾われた。
ペロ。
僕は、こんな脱力感たっぷりの名前で生きていくのは嫌だと心から思った。
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