僕が辿りついたのはお気に入りのこの店

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瞬く間に五年が過ぎた。 ロクイー師のもとを旅立って数ヶ月。 僕は、大学のあるルシリア王国に腰を落ち着けていた。 創製の材料が手に入れやすく、魔道具屋も多く住みやすい国だ。 とは言うものの、物価は高い。 下宿は何とか見つけられたが、僕の魔道具を買ってくれる店は見つけられずにいた。 魔法鍛冶師になったばかりの僕は、あまりにも無名だ。 そして材料費がここまで高価だとは思いもよらなかったのだ。 師匠もロクイー師も、そこの所は無頓着だったから今まで知ることが出来ずにいたのだ。 銀の塊を手に入れた所で、僕の所持金は殆どなくなった。 扱いやすく無難な短剣を仕上げて、僕はあちこちの魔道具屋を訪ねたが相手にして貰えない。 買い取ると言って貰えても、足元を見られて儲けが出ない。 絶望感に襲われながら、街外れの小さな魔道具屋に辿りついた。 若い赤い髪の女性店主は、僕の救世主だった。 ひと月分の生活費と材料費を手に入れて、僕は天にも昇る気持ちで店を出た。
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