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「待ってぇ!」
店主が赤い髪を振り乱して追いかけて来た。
まさか鑑定額が違ったのだろうか。
今更返金しろと言われても困る。
身構えたが、どうやら僕の勘違いだったようだ。
「あなたの腰の剣を見せて!」
「これは売りませんよ」
「そうじゃないの。多分普通の人は絶対手に出来ない物だから」
師匠が僕にくれた剣だ。
僕が店主にそれを渡そうとすると、首を振って断られた。
「やっぱり人喰い……。あなたアートルムに縁のある人かしら」
「いえ、師匠に貰ったんです」
「お師匠様のお名前は?」
「ポポです」
これを言うと、皆が妙な顔になってちょっと恥ずかしい。
「……この看板の加工に見覚えはない?」
僕は、店の看板がこんな所にあることに初めて気づいた。
「ええと。……え?この色……師匠?」
黒みがかった深い色だけど、断面は光の加減で様々な色を反射する。
ごくごく素朴に見えるけれど、複雑な手順を踏んだ加工は僕には未だ真似できない。
「何故最初に気づかなかったんだろう……」
「色んな泥棒除けがついてるからだと思うの。それはともかく、この看板の銘はアートルムよ。あなたの師匠、何者かは知らないけれど、恐ろしく人が悪いわ」
ケラケラと笑う店主を、僕はただ呆然と眺めるだけだった。
【完】
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