僕が辿りついたのはお気に入りのこの店

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一年ほども経っただろうか。 我が儘で食い意地が張っている師匠のおかげで、僕も一日三回の食事に何とかありつけたのは幸いだった。 師匠の胸までしかなかった僕の背丈は、追いつくまで頭一つ分の所まで伸びていた。 ある日、師匠は、僕に一振りの剣を放って寄越し、一通りの扱い方を教えてくれた。 滅多にないことだから嬉しくて、半日振り回していた僕は、バッタリ倒れて三日も起きられなかった。 「そりゃそうだ、普通の剣じゃない、魔剣だからな。扱うには体力も魔力も持っていかれる」 「そんな大事なこと最初に教えて下さいよ」 「素質はある。握っただけで倒れる奴もいるからな。半日振り回していられるのは相当な馬鹿だ。でもそれが今のお前の限界だ。力の配分を覚えろ。そこだけは人によって違うから、教えられることじゃないんだ」
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