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ドゴン。
重い音を立てて、金属の塊が僕の前に置かれた。
魔法鍛冶師とは言え、何もない所から物を生み出せるわけではない。
出来るのは魔力を用いた加工なのだ。
「何でも良い。魔力を使ってこいつを別の形にしてみろ」
師匠の無茶振りが始まった。
僕の可哀想な青春時代を返して欲しいとちょっと思う。
「無理ですよ」
「お前、俺の仕事を見てきただろう。できないとは言わせん」
「呪文も何も教えてくれないじゃないですか」
「そうだっけ?」
「何をどうしろと言うんですか」
「呪文なんて手順の確認でしかないんだ。仕方ないから特別に教えてやるがな」
僕はワクワクしながら師匠の言葉を待った。
「集中して厳かに。大きくなあれ、大きくなあれ。ここで大事なのは呼吸法だ。ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」
僕は、心の中で半泣きになりながら唱えた。
「大きくなあれ、大きくなあれ」
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