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ところが目の前でテーブルを拭いていたマスターの甥、成田克也が顔を上げ、
「あまり、なにやってんだ?
早く持ってかないと冷めるだろ」
と言い出した。
そ、そうですよね。
冷めますよね。
この美味しい珈琲を美味しいタイミングで出せないなんて悪ですよね、悪。
店の前を通るたび、素敵なカフェだなーと眺めていた店に、やっと雇ってもらったのだ。
マスターのためにも、今すぐこの珈琲を運ばなければっ。
ただ、珈琲をそこからそこに運ぶだけなのに、あまりは妙な使命感に目覚め、悲壮な覚悟で外に出た。
大丈夫……。
大丈夫だ、きっと。
なんか一生懸命話してるから、こっちになんて、顔も向けないに違いない。
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