箱から覗いてみました……

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 そして、なんのためにこの人、出直してくる必要があるんだ、と思っていたが。  今まで挨拶するだけだったのに、声をかけてきたのには、訳があったようだった。 「実は、君が勤めてるカフェに、我々、三課が追っている人間が時折現れるんだよね」  だが、海里はワインを構えたまま、 「警察に協力する義務はない」 と男に向かい、言い放っていた。  ありますよ……。  国民として。 「なにが事件だ。  いきなり硬い話しやがって、わざわざ高いワイン買ってきて、いい雰囲気にしようと思ってきたのに」 と海里が愚痴ると、すみません、と男は素直に謝る。  同性として、同情の余地がある、と思ったのかもしれない。
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