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「うっわ、広っ」
扉を潜って進むと、そこは、随分と広い廊下のような場所だった。いや、廊下というよりも、これはまるで……ダンジョンだ。ゲームの中で挑むダンジョンに似ていると、どうしてかそう思ってしまう。
どこかネットリとした空気の中、僕は少し興奮気味に辺りを見回す。
もし、万が一、ここが異世界だとすれば、どこかにモンスターが居るかもしれない。
そう思ってしまえるくらいには、そこは、雰囲気満点だった。……ただ、自分の装備のこともあって、その場の雰囲気に酔っているだけかもしれないが。
「ここの光源も苔みたいだな」
ダンジョンっぽい雰囲気の中、僕は#篝火__かがりび__#が全くないことに少しだけ残念な気持ちになる。何となく、篝火があった方がもっと本格的になるように思えたからだ。
「まぁ、これはこれでありだけど」
ひとまず、この苔が全部剥がれ落ちるようなことでもない限り、光源には困らない。それを考えれば、篝火ではないことは、むしろ良いことなのかもしれない。
「よしっ、まずは探検だなっ!」
本来なら、ここはどこなんだとか、どうしてこんなところにとかいった内容で不安になっても仕方ない状況。にもかかわらず、僕は、むしろやる気に満ち溢れていた。
少なくとも、拘束はされていなかった。監視はされているようだが、動けないわけじゃない。それどころか、武器までもたされている。これならば、多少のことはどうにでもなるだろうと思えた。
コツコツと足音を立てて、僕は通路を眺めていく。変わり映えのしない通路でも、今の僕にとっては面白いものでしかなかった。
ただ……そんな風に通路を見ていたからだろうが、僕は、その時、偶然にもそれを見つけられた。
「ん? これ、何だ?」
それは、ただの引っ掻き傷にしては、少し複雑に見えた。それで、僕は不審に思って近寄ってみたわけだが……。
「……何だよ、これ……」
そこには、同じ内容が繰り返し、刻まれていた。
『助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて――――』
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