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「一応、ここは安全地帯らしいけど、三日後に何かの危険レベルが上がるんだったら、それまでに外の様子を確認しておくべきだよな」
もっともらしい理由を言いながら、僕は一瞬の躊躇の後、扉へと手をかける。この場所の手がかりを求めて、踏み出す。
生温い空気の中、僕は慎重に歩を進める。僕は別に、ホラー映画が苦手とか、そういうことはなかったものの、人並みに驚くくらいのことはする。曲がり角からいきなり何かが飛び出してきたりして、平静を保てる自信はない。
いつでも剣を抜けるように握りしめ、曲がり角の度にそっとその先を確認しては進む。と、そんな時だった。その音が聞こえてきたのは……。
コツコツコツコツ……。
「っ!?」
それは、誰かが歩く音。誰かがこの場所に居ることを示す音。
僕は、音を立てないように、ゆっくり、ゆっくりと進み、その音がどこから聞こえてくるのかを耳をすまして確認する。
コツコツ……コツコツコツ。
その足音は、どうやら何か迷っているように止まったり動いたりを繰り返している。そして、音の主は、斜め前くらいの方角に居るらしい。
僕は、音の大きさから、相手がすぐ近くに居ることを察し、本格的に息を殺す。もし、相手が僕をここに連れてきた犯人ならば、脅してでもここから出してもらうつもりで、慣れない武器を強く握る。
コツコツ、コツ「きゃっ!?」
「ん?」
ただ、その足音の主は唐突に悲鳴を上げた。しかも、その声にどうにも聞き覚えがある気がして仕方がない。
「な、何これ、モンスター?」
それは、柔らかな女性の声。ちゃっかりとした性格で、可愛くて仕方がない、大切な人の声。
「ふ、ふぇ、お兄ちゃん、どこ?」
その声がした瞬間、僕は慎重にだとか、冷静にだとかいった言葉をかなぐり捨てて走り出していた。そして、僕が見た光景は…………手のひらサイズの花のモンスターが、僕の妹に、琴音に襲いかかろうとしている姿だった。
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