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生まれつきの茶髪に天然パーマがかかった長い髪。気の強そうな黒い瞳は、今は潤んで、怯えの色をにじませている。その華奢な体には、俺と同じように甲冑を……ただし、冑を取った状態で身にまとい、へたり込んでいた。
そして、その琴音の前には、手のひらサイズだった花が、高さ五十センチくらいまでいきなり伸び上がり、蕾を開いてびっしりと生えた歯をあらわにして、襲いかかろうとする。
「うおぉぉぉおっ!!!」
僕は、琴音を助けるべく、無我夢中で駆けつけ剣を花へと振り下ろす。
「ひっ」
「ジャッ」
琴音の悲鳴と花の悲鳴(?)がほぼ同時に響き、花の方は真っ二つに斬れて倒れる。そして……黒い光を放ったかと思えば、霧散した。
「これは……」
「やっ、やっ、こ、来ないでっ!」
花があった場所に新たに現れた蔦らしきものを見ながら言葉を失っていると、先に我に返った琴音が後退りしはじめる。その様子に、僕は冑を被ったままだったことを思い出し、慌てて弁解する。
「大丈夫だっ、琴音。僕だよ。透だっ」
「っ、お兄ちゃん?」
慣れない冑を四苦八苦しながら取り外すと、琴音は大きく目を見開く。
「えっ? お兄ちゃんも誘拐されたの?」
「うーん、そうみたい……と思ってたけど、もしかしたら、事はそう簡単じゃないのかもな」
そう言って蔦に視線を移せば、琴音もハッと息を呑む。
「そうだよね。これ、普通じゃない……まるで、別世界」
先程まで怯えていた琴音は、そう状況を分析しながら手の震えを治めようとする。
僕は、そんな震える琴音に、悪いと思いながらも質問することにする。
「琴音がこの場所で目覚めたのは、今日?」
「ううん、私、昨日には目が覚めたよ。本当は扉の外に出るのも怖かったけど、食料が何もなくて……仕方なく、今日は色々探してみようと思ってたの」
説明するうちに、琴音は少しずつ落ち着きを取り戻していく。それが良い傾向だと思った僕は、詳しく考えるのを後回しにして質問を重ねる。
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