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「ここに来る前の最後の記憶は?」
「えっと、彰君を探してて、街を回ってるところで終わってる」
僕と同じか……。
「じゃあ、目が覚めた場所に何があった?」
「見つけたのは、『冒険の書』ってタイトルの本と、剣、今私が着てる甲冑は最初から着てて、お兄ちゃんみたいに冑もついてたよ。あ、あと、リュックもあった」
どうやら、僕と琴音は目覚めた日以外は同じ条件下に置かれているらしい。
「目覚めた日以外は僕と同じみたいだ。他に、何か変わったことはあった?」
「えっ、同じ? じゃあ、あの『冒険の書』っていうので監視してる内容が書かれるのも?」
「同じだな」
そんな話をしていると、ようやく、琴音の震えは治まった。
「とりあえず、場所を移動しようか。ここはまだ危険かもしれないし」
「う、うん」
『危険』という言葉にピクリと反応した琴音だったが、震えが再発することはなく、どうにか立ち上がってくれた。
「……とりあえず、これは回収しておこうか」
そして、僕は蔦を回収してリュックの中に入れる。
「お兄ちゃん、そんなもの、どうするの?」
「いや、ほら、ゲームとか物語ではアイテムには必ず使い道があるだろう? ここが本当に別の世界なら、何か役割とかあるかもしれないし……『冒険の書』なら確認とかできそうだけど、それは後にして持って帰ろうかなと」
「ふーん? 分かった」
そう言って納得した琴音は、そのまま僕に着いてくる。
「とりあえず、僕のところの安全地帯に戻るよ」
「安全地帯?」
「最初に目覚めた部屋のこと」
「分かった」
素直にうなずく琴音を確認すると、僕達は静かに、何者にも見つからないよう慎重に、安全地帯へと向かうのだった。
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