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「……トマトッ!! って、あれ? ここ、どこだ?」
何か寝言らしきものを叫んで目が覚めた僕は、全くもって見覚えのない光景に首をかしげる。
見渡す限り灰色っぽい石の天井で、何やら発光している苔がそこかしこに生えている光景。これを見て、『知らない天井だ』とかいう言葉を出せる人間は、きっと危機感ゼロの人間くらいだろう。
「よっこらせっ」
と、言っても、僕にもその危機感があるのかどうかは怪しいかもしれない。つい、いつもの習慣で、年寄りじみた掛け声を出してしまうのだから……。
「……ほんとに、ここ、どこだよ?」
改めて起き上がって見渡してみると、天井と同じような石の壁に囲まれていることが分かる。
僕自身は、安っぽいベッドの上に寝転がっていたようで、何やらガチャガチャとした音がするし、体が痛いと思って見てみると、鎧を着ていた。
「おぉう、スゲー。これ、甲冑だよな」
それは、西洋の騎士が装備するような甲冑で、鉛色が鈍く苔の光を反射している。興味本意に動かしてみると、それなりに重く、コスプレにしては本格的だと思ってしまう。
「っていうか、何で僕はこんなコスプレをしてるんだ?」
何か変なパーティーにでも誘われたりしただろうかと首をかしげるも、どうにも記憶が曖昧だ。
「確か、彰を探してて、町を歩き回ってたんだよな……」
一週間前、突如として行方不明になった親友。奇妙なことに、僕と妹の琴音以外は、その彰のことを最初から居なかった存在として、全く覚えていなかった。それは、彰の家族でさえも同じだった。
異常な現象に危機感を抱いた僕は、琴音と一緒になって、毎日彰を探していた。ただ、覚えているのはそこまでだった。
「どう考えても、こんなコスプレに繋がる記憶がないんだよなぁ」
言いながら、僕は腰に刺さっていた剣を抜いてみる。
「おっ、結構重……い?」
それは、重かった。重すぎた。ただの、コスプレだとするには、その剣の輝きは、あまりにも現実味を帯びていた。
「これ、もしかして、本物?」
鉛色の光を反射する剣を見て、僕は呆然と呟く。だって、あり得ないのだ。日本では銃刀法違反なんていう法律がある。こんな本物の剣が、ここにあって良いはずがない。
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