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部屋の中を探し回って見つけたのは、結局、ベッドの下に隠れていたリュックだけだった。そして、改めて『冒険の書』を確認してみると、内容に変化が見られた。
『冒険の書
一日目
第一フロア 地帯区分A
滝野透は、現状の確認を行う
ベッドを調べた
リュックを手に入れた
リュックを調べた』
「……これ、絶対誰かに監視されてるよな?」
的確に自分の行動を表したその文章に、僕は頭を抱える。少なくとも、監視している人物は自分の名前まで知っているというのだから、笑えない。
どこに監視カメラが設置されているのだろうかと顔を上げてみた僕は、しばらくじっと天井を見て、歩いたりもしながら探し続ける。しかし……。
「あー、分からんっ」
光を放つ苔が天井にも生えていることまでは分かったものの、それ以外には情報が見当たらない。確実にどこかへ隠されているのであろう監視カメラは、僕では見つけられないようだった。
ずっと上を見上げ続けたせいで少し痛む首を揉みほぐし、ベッドの上に腰かける。
「見つけたとしてもどうしようもないしな」
監視カメラを見つけられなかったことに落胆しながらも、自分に言い訳をした僕は、もう一度『冒険の書』へと視線を落とす。現在の有力な情報源は、この『冒険の書』くらいだから仕方ないだろう。
「あれ? 更新されてる?」
一目見た瞬間に文章が増えていることに気づいた僕は、嬉々としてその文章を読んでみる。
『滝野透は天井を一分間以上見つめた
称号 【天井を赤面させた者】をゲット』
「……は?」
意味不明な文章に放心した僕は、そのまま続きの文章へと目を通す。
『称号 【天井を赤面させた者】
天井を一分以上見つめたものに贈られる
効果 天井を見つめると、一時的に部屋が暖かくなる』
目を通して、さらに意味不明な文言に、僕はとりあえず言う。
「……もしかして、壊れた?」
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