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この『冒険の書』が機械であるならば、その可能性もあり得るだろうと口にして、しかし、ただちに頭を振る。壊れたのならば、文章として成り立っているのはおかしい。つまりは、大真面目なのかもしれないのだ。
「天井を見つめたら、部屋が暖かくなる、か……やってみるか」
暖房器具らしきものは、今のところ見えない。しかし、もし『冒険の書』が壊れたのでなければ、本当に部屋が暖まるかもしれない。そう思って、僕は天井を見上げてみる。
「…………何か、本当に暖かくなってきたんだけど」
十秒ほど見上げてみると、先程までは暑くもなく寒くもないという感覚だった部屋が暖まる。どこからともなく流れてくる暖かな空気によって、部屋の温度が少し上がったのを感じる。
『行動確認
称号効果発動
五分間、部屋が暖まる
天井の好感度アップ』
『冒険の書』を見ると、そんな新たな更新もあり、自分の体感が間違いではないということを示してくれる。ただ、『天井の好感度アップ』という言葉は不思議でしかないが……。
そうして僕は、何も考えずに続きのページを見てみようと捲ろうとして……できないことに気づく。どうやら、ページが貼りついていて捲れないようになっていた。それでも、他のページが捲れないだろうかと見てみるが、どこも開けそうにない。やっぱり、これは機械であって、本ではないのかもしれない。
「うーん、これ以上の情報はないか……」
ガッカリしながら、僕は本をベッドの上に置く。ひとまず、この本は必要なさそうだ。
「今はとりあえず、外の様子を確認しなきゃだよな」
情報がないなら仕方ない。拘束されているわけでもないのだから、向こうに見える扉をそろそろ潜るべきだろう。
リュックと念のために剣を持った僕は、一つうなずいて、扉へと向かった。
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