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芹澤鴨を暗殺するためにわざわざ宴を催したのは 今から一年と半年前のこと。
芹沢派の三人を他の隊士たちより早く宴に招いておいたのは、しっかりと酒に酔わせておくためであったのは言うまでもありません。
泥酔した芹沢鴨、平山五郎、平間重助は、近藤が用意した駕籠で壬生の八木邸へと先に帰されます。その連絡を受け、暗殺を決行したのは、土方歳三、沖田総司、原田左之助、そして山南敬助の四人でした。
芹沢と平山は奥の十畳間で、平間は入り口付近の別の部屋で、それぞれ妾を伴って眠っていました。
芹沢を土方と沖田が、屏風を隔てて同室の平山を原田と山南が襲います。そして異変に気付いて騒ぎ立てる芹沢の妾、お梅を土方が斬って捨てました。
そうこうするうちに騒ぎに気付いた、別室の平間が起きてきました。
刺客の姿を目の当たりにした平間は急いで姿を隠そうとします。しかし原田はそれを見逃さず、先回りして平間を正面から追い立てました。
追い立てられて姿を現した平間は、すぐその先で山南と一対一で対峙する格好となったのでした。
山南の腕を持ってすれば、酔った平間ごとき一撃で斬り捨てるなど造作もないはずです。けれども山南は刀を振り下ろすことはしませんでした。
わずかの間互いに見つめ合い、共に敵意が無い事を確認すると、山南は目を動かして立ち去るように合図を送ります。
平間は山南に目礼を返してその場を立ち去ろうとしました。が、しかし、その行く手はすぐに土方に阻まれてしまったのでした。
山南は、平間に向けて剣を構えた土方を制止しました。目標は芹沢一人。それ以外は抵抗しなければ切る必要はない、当初からそう決めていたのですから。
そう言う山南に対して、土方は不満を露わにします。
二人の対立によって生じた一瞬の隙を突いて平間は姿を眩ましました。
すぐに後を追って原田と沖田が飛び出しますが、激しく降る雨の音と漆黒の闇が、追われる者の気配を包み隠してしまったのです。
かくして平間は窮地を脱し、命を長らえることができたのでした。
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