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彼の名は、ウェルシュ・コーギーのサオラ。
アジリティ競技に『一応』出場する犬だ。
そう。『一度』。
と、言うのは同時期にドッグトレーニングセンター通いになった犬達が次々と才能を開花させ、アジリティやフリスビードッグ等、犬競技大会に大活躍しているからだ。
特にアジリティ競技には、上位を総嘗め。
エントランスには、犬達が頑張って獲得したトロフィや賞状、記念写真がところ狭しと並べられていた。
しかし・・・だ。
コーギーのサオラのトロフィや賞状は、1個も無かった。
何時も、何らかの障害で転倒したり反抗したりと、エラーや失格ばかりやらかすドジな犬だったからだ。
才能が無いと悟ったサオラのパートナーは、サオラを毎回『補欠』の犬として、一応来させているだけの身だ。
「何で俺は毎度、待機席に居残りなんだ?毎回ヤル気満々なのに・・・
出せよ!!出してくれよ!!」
サオラは嫉妬した。
仲間達が、華麗にアジリティ障害を飛んで駆け抜ける姿を見るのがサオラには、とても苦痛でしか無かった。
「飛びたい!駆け抜けたい!トンネルに入りたい!!スラロームしたい!!
俺なら、そんなタイムを悠々更新してやらあ!!」
ばうっ!!ばうっ!!ばうっ!!ばうっ!!ばうっ!!ばうっ!!
「こらっ!競技中に吠えるなっ!!この『補欠』の『オケツ』野郎!!」
「やーいやーい『補欠』野郎は『オケツ』野郎!!」
競技から帰ってきた同僚の犬に、サオラは囃し立てられて癪に触った。
・・・今に見ていろよ・・・!!
・・・そのうち、お前らを逆に嫉妬させる犬になってやる・・・!!
・・・このムチムチした自慢の俺のお尻に誓って・・・!!
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